実写のVRのストーリーテリングに関する調査

こんにちは。

アイドルやスポーツのライブストリーミングを行なっているSHOWROOMで、番組のVR化を進めております、エンジニアの小倉と申します。DeNAの技術開発という、メンバー個々人が研究開発をした技術をそれぞれに適合しそうなサービスに持ち込む、ちょっと変わった部署に所属しています。

今回は社内の国際学会カンファレンス支援制度という、有望な若者を世界に送り出す制度(を、おっさんが使ってしまった罪悪感を噛み締めながら)で、SXSW2017に行った報告をお届けします。

SXSW出席の経緯:

SXSW2017に出席した3/10の時点のSHOWROOM VRは単眼360度(=立体ではない360度)のライブストリーミング配信でした。単眼360度の映像では、VRグラスで見るよりもスマートフォンでみる方が快適で、ぐるっと後ろを見るとスタジオのおっさん達が映ったりして、「コレジャナイ感」「いや絶対コレジャナイよ感」がそこはかとなく漂う状況にありました。

風景主体のコンテンツは360度で配信した方が臨場感が出ますが、演者さん主体のコンテンツは注視点の方向が決まってるいわけですから、360度である必要はありません。アプリケーションのUIには番組参加のユーザーの注視点ヒートマップがあり、皮肉な事に360度である必要がないことを示しています。(※補足有り)

視野角を180度に割切る代わりに、左右の目の位置からみた映像をライブストリーミングして、スマートフォンとCardbordでリアルタイムにアイドルを立体で見られる方が、体験としてはインパクトがあります。 結果的に、この方が通信帯域を有効活用する事にもなります。

普段の生活では得られない視点から人や物を見られる事自体が、新しい体験となります。そこに4K 3D配信が入り、更に鮮明な体験が作れるようになりました。これは、「SHOWROOM VRのコンテンツをもっと進化させられないか?」、「旅行やスポーツなどへの利用を進められないか?」という問題意識を、より強く持つようになりました。これが今回SXSWに出席した理由です。

※補足※ 360度必要ないという判断は、FLAT(360度との対比で普通の四角い映像を指す言葉)の撮影を目的とした現在のスタジオの構造から来る結論であり、今後はそこも含めて変わる可能性は十分あります。実際、AKB48のオールナイトニッポン(毎週水曜25:00開催)は机の中央に360度カメラを置き、コンテンツとして360度が活かされてます。

SXSWとは:

米国テキサス州オースティンで毎年開催されるアートとテクノロジーのイベントで、1987年に音楽祭として始まって以来30年間続いています。取り扱う題材の範囲が広く、議論の切り口も斬新です。トップページの動画を見ても色々詰まり過ぎていて何のイベントかさっぱり理解できません。

2017-05-29 9.56.35.png Austin Convention Center(SXSWの中心的な場所)

2017-05-29 9.56.48.png 図:SXSWスケジュール表

スケジュール表にある通り、4つの分野「Music」「Film」「Interactive」「Comedy」が更に細分化されているのが分かると思います。VR/ARのカンファレンスは、表中央の「Convergence」欄なので、「Music」「Film」「Interactive」の合わせ技となります。それは、この期間に集中的に議論されることを意味しています。この期間だけというわけではなく、VR/ARのタグがついたカンファレンスは開始早々の3/11から「Interactive」「Film」の中にも埋もれています。

開催期間中はオースティンの街全体が会場ムードです。街のあちこちでカンファレンス、展示、デモ、パーティーが行われていて、VR/ARもその一つです。 Uberが使えないオースティンの街で往来を終日×1週間続けるのは、体力勝負の情報収集となります。また、カンファレンスには当たり外れも多いです。20分歩いて辿り着いたのに「キャパオーバーで入れない」とか、「期待外れで落胆する」ということが続いても、折れない心が必要です。

AR/VRの議論の前提「AR/VR=メディア」:

まず、「AR/VR=メディア」という捉え方は、あまり日本では意識されていないと思います。理由としては、日本のメディアは率先してAR/VRを取り上げていないことや(※NHK技研を除く)、CGを使ったVRゲームのコンテンツ開発が主流だからだと考えられます。

AR/VRがメディアとして意識されていない状況(日本におけるAR/VRの状況)を、あえて極端に図示してみました(下図参照)。この状況では、AR/VRというのは新しいもの好きな人々ための何かで、多くの人が関係するものとしては認知されにくいと考えられます。

また、海外の様にNPO・NGOでVRコンテンツ製作が活躍しているといった話を聞きません。日本のVRのオピニオンリーダーはインディーゲーム開発者とその投資家で、孤軍奮闘しているという状況です。

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一方で、米国ではSXSWに限らずAR/VRはメディアとして捉えられています(下図参照)。ゲームクリエイターはもちろん、スターウォーズのようなメジャー映画のコンテンツ製作をするクリエイターや、医師、ジャーナリスト、NASAのマーケティングもオピニオンリーダーとして参加しています。AR/VRは将来的に多くの人が関わることになるものとして、大真面目な議論が行われています。

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まず、この違いを認識していると、議論の範囲や、規模感を理解しやすいと思います。日本でAR/VR関連のプロジェクトの稟議が通りにくい、根本的な理由はここにあると思えます。勘が良い方は、この状況が放置されていることに危機感すら覚えると思います。というのも、未来の世代の教育レベルや国力、あるいはメディア戦に影響を与えかねない話だからです。

カンファレンスについて:

カンファレンスはパネリストによる、2人~4人のパネルディスカッションの形式が定番です。スライド資料はほとんどありません。ひたすら続く会話から重要と思われるキーワードを拾っていきます。一例としてNASAのパネルディスカッションを紹介します。

Space 360: Experience NASA Missions in VR/AR/Video

p7-05-29 9.57.54.png NASAのパネルディスカッションに参加した際のメモ

実写のVR、360度動画に関してはSXSW2014から活発に議論が行われています。当時は「この100年間で確立されたカメラワークや映像の編集方法が360度では通用しないため、模索するところから始めましょう」という論調でした。

SXSW2017においてもこの延長線上で議論がなされており、今も模索は続いています。「エクストリームな環境(例えばスキューバダイビングでサメに囲まれるものや、スカイダイビングの様な360度動画)を観ると、人は驚く」ということは確認されました。そこから長時間楽しめるコンテンツにする為に「ストーリーテリングはどうすればいいのか?」といったところに論点が来ています。

まとめ:

AR/VRに関するパネルは期間中に11セッション出ました。このうちVRのメディアとしての強みや、ストーリーテリングについてだいたいまとめると以下のようになります。

17-05-29 9.58.03.png

実写のVRの場合、「どこで情報を集めればいいのだろう?」「その場合のストーリーテリングは?」という疑問はずっと昔からありました。カメラ、ツールに関する情報はたくさんありますが、コンテンツ製作に関する情報はなかなかありません。というのも、まだ模索の段階だからです。

SXSWはそうした議論を幅広く行なっている場であることから、自分も2015年から行きたいことを表明しておりましたが、ようやく2017年に稟議が通りまして参加できた次第です。

一方、かつてのビデオ、インターネットが参考となるように、コンテンツ市場の拡大を予測する一般的な目安として、アダルト市場の動向があります。実写のVRコンテンツでも先行しているアダルト市場では、2017年から大手が次々と参入する段階に入っています(制作関係者筋談)。

どんな理由にせよ、一般層にCardbord、Gear VRなどの360度動画向きのHMDが広まることで、この後は実写のVRのコンテンツ全般に様々なチャンスが出てくると考えます。同時にコンテンツの粗製乱造のためにユーザーが離れたり、実写に少しアノテーション情報を重ねただけでAR、MRと表明するものなどが出てくるため、ARもVRもMRも名称が混乱する状況になると考えます。

TechBlogという場でTechとはあまり関係ない話をしてしまいましたが、本業はエンジニアで、GPUのコードを書いてストリーミング用の360度カメラや3Dカメラを製作したり、スマートフォン・アプリケーション側でVRの画質を向上するような仕事をしております。 機会があれば、こうした技術ノウハウも共有して参りたいと思います。

お付き合いただき、ありがとうございました。

告知:(放送は終了しました)

5/29 22:00より「ミスFLASH 2017」の4K 3Dライブストリーミング放送を行います。

mifla2017.png

必要なものはSHOWROOMアプリ(iOS版Android版)、あとはCardboard かそれに準ずるものがあれば良いです。

実際、リアルタイムで立体でアイドルを見るというのは、動画とも、また単眼の360度動画とも、体験として全然違うものになります。 番組開始時間にアプリから番組に入っていただくか、ここを踏んでいただければ始まります。まだまだ発展途上中のサービスですので、御意見をいただければ幸いです。

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